こんな方におすすめ
- 会計と税務は違うの?
- 税務会計ってなに?
- 経理の税務担当はなにをするの?
こんな悩みを解決できる記事を用意しました!
この記事で紹介する「経理が知りたい会計と税務の違い」をご参考にすれば、みなさんの経理実務や転職活動に役立ちますよ。
とくに、経理未経験者にとっては、税務に苦手意識を持ちがちですよね。
でも、税務の目的を知っておけば、税務の考え方はそれほど複雑なものではありません。
プライム企業の経理4年目、税理士試験に合格した現役経理マンが紹介します。
記事前半では「経理が知りたい会計と税務の違い」について、
後半では「税務会計に役立つ資格」について解説するので、ぜひ参考にしてくださいね!
経理が知りたい会計と税務の違い
そもそも会計と税務って考え方が違うの?
税務を学習しない限り、会計と税務の考え方に違いがあるってことは分かりませんよね。
結論からいうと、会計と税務の考え方は違います。
考え方の違いをざっくりいうと、
- 会計は、なるべく利益を出したくない!
のに対して
- 税務は、なるべく利益を出したい!
からです。
つまり、損失を計上できるかどうかでお互いの考え方が対立するわけですね。
どうして損失計上の考え方が対立するの?
対立する理由は、会計と税務の数値が使われる目的を理解すれば、納得できるかと。
ここからは、会計と税務のPartに分けてそれぞれ解説しますね。
【経理が知りたい会計と税務の違い】会計の考え方
まず、会計について。
そもそも会計が生まれた理由は、会社の成績を表すため。
なぜなら、その成績をもとに、投資家や取引先は投資や取引をするかどうかの判断材料にします。
当然、会社からすると、自社の成績が良い方が有利になりますよね。
理由は、
- 銀行からの融資枠が増える
- 投資家から評価され、株価が上がる
など、成績が良ければ会社にとっていいことばかり。
そうゆうわけで、会社はなんとか利益を上げようと頑張るわけですね。
もちろん、努力して合法的に利益をあげることはいいことです。
とはいえ、経営者の中には、努力でなく不正をして利益をあげてしまうことも当然あります。
事実、最近でも不正会計の事象は後を絶ちません。
これは、大きな事件の一例ですが、みなさん「エンロン事件」っていう言葉を聞いたことがあるかもしれません。
エンロン事件とは、世界最大手のエネルギー販売会社だったエンロンが経営不振に陥り、総額160億ドルを超える巨額の負債を抱えて倒産した事件です。エンロンは、相次ぐ海外の大規模事業の失敗などで実際には経営状況が悪化しているにも関わらず、CFO(最高財務責任者)の指示で不正な会計処理をして偽の財務報告をしていたのです。
要するに、会社サイドでは、なんとか利益を上げようという力が強く働くわけです。
まあ、利益に目がくらむのが人間の性ですよね。
でも、こうした不正をすると当然誰かに迷惑がかかるわけで。
結果的に被害を被るのは、会社の成績を信じた投資した投資家や取引先です。
もし、不正で株価が落ちれば、投資家が投資したお金も吹き飛びますので、
彼らからすると許せないですよね。
当然、投資家は嘘の情報が飛び交う株式市場で取引しなくなりますよね。
そうすると、最悪の場合、経済活動も停滞して、不景気に突入してしまいます。
決算書の品質はそれほど大切なわけですね。
これを避けるためにも、会社の成績をチェックする監査法人は、
「会社の利益が出すぎていないか?」を特に厳しくチェックするわけです。
実務ではよく、
- 売上を計上するタイミングが早すぎないか?
- 減損損失を計上しなくていいのか?
などの論点を詳細にチェックします。
整理しますと、
会社は、自社に有利にするために利益を多く計上したい!
⇩
ルールを破っている可能性がある。
⇩
投資家が損をして、不景気になる可能性あり。
⇩
それを避けるために、監査法人は「会社の利益が出すぎていないか?」の視点で厳しくチェックする。
の流れになります。
【経理が知りたい会計と税務の違い】税務の考え方
次に、税務を解説しますね。
税務もそもそもの目的から考えていきましょう。
一言メモ
そもそも税務には色んな種類の法律がありますが、ここでは法人税のことを取り扱っていますよ。
税務の目的は、会社から税金を受け取って、国の財源にすること。
国の財源の半分以上は、税金なので、国からすると超重要な財源。
中でも、会社が支払う『法人税』の割合は上位に入ってきます。
引用先 : 【国の財政】財政のしくみと役割 (国税庁)
当然、税務署は「きちんと税金を支払っているか?」の視点で厳しくチェックしてくるのは理解して頂けるかと。
もちろん、ほとんどの会社は、税務の法律を守って税金を支払います。
とはいえ、会社の中には、「税金を少なくする方法はないか?」と法律を破って税金を払わないケースもしばしば。
よく「脱税」なんて言葉は聞いたことがあるかと。
例題
そもそも、法人税は会社の利益に対して税率をかけ算します。
具体例で解説すると、
A社の利益が1億円で、法人税率が30%だとすると、
(1億円 × 30% = 3千万円)
3千万円も法人税を支払わなければなりません。
つまり、会社はなるべく税金を減らすために、利益を減らそうとします。
上記の例題の、利益が5千万円になれば、
(5千万円 × 30% = 1.5千万円)
1.5千万円になりますよね。
当然、会社が意図的に利益を下げないように、税務では厳しいルールがあります。
とくに、費用や損失は、きちんと確定したものでないと計上することはできません。
よく、債務確定基準といいますよ。
要するに、会計上は費用や損失で計上しても、税務上は認めてくれないわけです。
ここで、
会計は、なるべく利益を出したくない!
のに対して
税務は、なるべく利益を出したい!
の会計と税務の考え方に差が生まれるのを理解して頂けるかと。
具体的にどんな処理に考え方の差が生まれるの?
具体的には、
- 賞与引当金
- 貸倒引当金
- 減損損失
- 税効果計算
など。
もし、利益が5千万円で、その内数に費用として
賞与引当金が5千万円計上していたら、利益に5千万円を足し戻すイメージになります。
(利益5千万円 + 賞与引当金5千万円 = 税務上の利益 5千万円)
経理の税務実務とは?
会計と税務の考え方に違いがあるのはなんとなくわかった。
経理ではどんな税務実務を行うの?
会計と税務の考え方に差があることが分かったところで、
実際の経理の税務実務って気になりますよね。
結論からいうと、以下の
- 税務申告書の作成
- 税効果の計算
- 届出書や申請書の作成
- BEPSの対応
- 税理士との対応
- インボイス対応
- 税務調査対応
など、挙げればきりがありませんが、とにかく税務に関することは何でも対応します。
とはいえ、会社によってこれらの税務実務を「どこまでやるのか?」大きく異なります。
なぜなら、『自社で税務申告書などを作成するか』or『税理士などにアウトソースするか』で変わるからです。
具体的には、
- 大企業は自社に税務部があるので「自社で税務申告書などを作成する」
- 中小企業や中堅企業はマンパワーが足りないため「税理士などに税務業務をアウトソースする」
のパターンが多い気がします。
もし税務としての専門家として、キャリアを積みたいのであれば大企業の税務部で経験するのがおススメですよ。
経理の税務実務である税効果について詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみて下さいね。
-
【初心者向け】繰延税金資産の計算方法を分かりやすく解説!
-
税効果会計の一時差異ってなに?
経理の税務会計に役立つ資格
税務実務に役立つ資格ってなにがある?
この記事をご覧いただいている皆さんは少なからず、税務実務に興味があるはず。
当然、税務実務に役立つ資格って気になりますよね。
結論からいうと、税務実務に役立つ資格はダントツで「法人税法」です。
なぜなら、税務の法律っていろいろありますが、中でも会社の税務に大きなインパクトを与えるのは「法人税法」だからです。
とはいえ、「法人税法」って超難関資格の税理士試験の中でも難しい法律だよね?
そこまで、情報収集できていれば素晴らしいです。
その通り、「法人税法」は超難関資格の税理士試験の中でも
ボリュームが多く、資格を取得するのにかなりの時間が必要になります。
合格率の例年10%台を推移してます。しかも、税理士試験に受けるには、一定の受験資格が必要なので、ハードルが高い。
では、税務実務はあきらめた方がいいの?
もちろん、税務実務に法人税法の資格が役立つことはありません。
とはいえ、税務実務を経験するのに、資格が必須なわけではありません。
どちらかというと、経理は経験を評価される職種ですので、
- 未経験・資格なしでも税務実務を積める会社を探して転職する
方が、効率的かと。
また、他にも「法人税能力検定」などの資格もあるので、こういった資格の取得を検討するのもありですね。
整理しますと、
経理の税務実務に役立つ資格は、圧倒的に「法人税法」
⇩
とはいえ、ハードルが超高い
⇩
経理は、資格より経験が重視されるため、難関資格の取得がマストでない。
⇩
「法人税能力検定」などを勉強しつつ、未経験・資格なしOKの会社に転職する
が一番現実的です。
税理士試験について、解説した記事も書いているので参考にしてみて下さいね。
-
税理士試験のメリット・デメリットを官報合格者が解説!
-
どの税理士試験の科目を勉強すればいいの?
まとめ
以上、経理の税務実務を中心に解説しました。
もし、税務の実務を経験したいのであれば、会計と税務の違いをきちんと抑えておきましょう。
また、経理は経験で評価される職種。
資格に執着しすぎずに、実務を積むことが効率的にキャリアアップする選択肢でもあります。
経理の中でも税務に精通している人は限られているので、税務の専門性を高めてキャリアアップするのはおすすめです。
みなさんの経理ライフや転職活動の参考になれば幸いです。