こんな方におすすめ
- 為替予約ってなに?
- 為替予約の会計処理を知りたい
- 独立処理と振当処理の違いを知りたい
こんな悩みを解決できる記事を用意しました!
この記事では、簿記の勉強や実務で役立つ、「為替予約の振当処理」について、
実際に、上場企業の決算を経験した筆者が解説します。
上場企業・経理歴3年、税理士試験に合格した現役経理マンが紹介します。
記事前半では「そもそも為替予約とは?」について、
後半では「独立処理と振当処理」について解説するので、
ぜひ参考にしてくださいね!
そもそも為替予約とは?
そもそも為替予約ってなに?
と思いますよね。
結論、為替予約とは、『将来のレートの変動リスクに備えること』です。
例えば、ネットビジネスでスニーカーの転売をしている企業が、
海外の人気スニーカーを日本で売る目的で、海外からスニーカーを仕入れます。
仕入代金(100,000ドル)の支払は、3ヵ月後になる予定です。
このとき、この企業は、100,000ドルの買掛金を持っていることになるのですが、
もし、3か月の間に、1ドル100円から110円まで円安(ドル高)が進むと、
10×100,000ドル=100万円の損をしてしまします。
為替の影響だけで、100万円損してしまうのは、痛いですよね。
そんなときに、あらかじめ、支払うときのレートを決めておいて、
「為替影響に備えましょう」というのが、為替予約になります。
先ほどの例で、3ヵ月後の支払いを103円にする為替予約をしておけば、
3×100、000ドル=30万の損で済みますよね。
為替予約の目的は、為替影響のリスクを抑えるってことはわかったけど、
問題に出てくる『直物為替レート』と『先物為替レート』ってなに?
って思いますよね。
結論、
- 『直物為替レート』は、今の相場
- 『先物為替レートは』は、為替予約で決めた相場
と覚えておきましょう。
正確に定義を確認したい方は、以下のサイトをご参考にするといいかと。
直物為替取引・先物為替取引
外貨の売買を契約した時から、実際に外貨の受け渡し(売買の実行)が行われるまでの期間の長さによって、外国為替取引は直物為替(spot exchange)取引と先物為替(forward exchange)取引の二つに分けることができます。
為替予約の会計処理の考え方
為替予約の概要を確認したところで、
為替予約の会計処理についても、確認してきましましょう。
簿記の問題では、『独立処理』と『振当処理』の2つがありますよね。
以下がイメージ図です。
つまり、『独立処理』が原則、『振当処理』が例外の位置付けですね。
そもそも『振当処理』のヘッジ会計ってなに?
って思いますよね。
ヘッジ会計とは、
『ヘッジ対象』と『ヘッジ手段』から生じる為替影響の期間を一致させること。
つまり、為替損益の影響が、各決算期でバラバラに計上されないためって理解でいいかと。
それに『ヘッジ対象』、『ヘッジ手段』ってなに?
って感じですよね。
先ほどの例でいうと、
ヘッジ対象とは、『スニーカーの購入による買掛金』。
ヘッジ手段は、『為替予約』。
つまり、
- 『ヘッジ対象』は、為替リスクを減らしたいBS科目
- 『ヘッジ手段』は、為替リスクを減らす手段(為替予約の他に金利スワップとか)
『ヘッジ対象』と『ヘッジ手段』の概念を知っていると、会計処理をするときうまく整理できるかと。
為替予約の独立処理と振当処理
それでは、為替予約の具体的な会計処理を説明しますね。
繰り返しになりますが、
為替予約には『独立処理』と『振当処理』があります。
イメージとしては、
- 『独立処理』は、普通に会計処理する。
- 『振当処理』は、期間配分する。
と抑えておきましょう。
【為替予約】独立処理
独立処理の考え方は、『普通に為替の評価を行う』です。
ヘッジ対象、ヘッジ手段をそれぞれ為替の評価を行います。
【例題】
海外の人気スニーカーを日本で売る目的で、海外からスニーカーを仕入れます。
実際の取引日は、2月1日で、3月1日に為替予約をしました。
仕入代金(100ドル)の支払は、予約日から3ヵ月後の予定です。
まず、ヘッジ対象の為替の評価です。
<取引日> 仕入 11,500円 / 買掛金 11,500円 (100ドル×2/1の直物レート)
<予約日> 仕訳なし
<決算日> 買掛金 1,000円 / 為替差益 1,000円 (取引日先物 - 決算日先物 (115 - 105) × 100ドル)
<決済日> 買掛金 10,500円 / 現金 10,000円
/ 為替差益 500円
次に、ヘッジ手段の為替の評価です。
<取引日> 仕訳なし
<予約日> 仕訳なし
<決算日> 為替差損 200円 / 為替予約 200円 (予約日先物 - 決算日先物 (105 - 103) × 100ドル)
<決済日> 為替予約 200円 / 現金 500円 (予約日先物 - 決済日先物 (105-100)× 100ドル)
為替差損 300円
ポイント
使うレートに注意して、ヘッジ対象とヘッジ手段それぞれ分けて、為替の評価を行うことを意識しましょう。
ちなみに、今回の例題では円高推移だったので、結果的に為替予約は不要でした。
【為替予約】振当処理
振当処理の考え方は、『直先差額を期間按分する』です。
例題は、独立処理と同じです。振当処理もヘッジ対象とヘッジ手段を分けて考えるといいかと。
【例題】
海外の人気スニーカーを日本で売る目的で、海外からスニーカーを仕入れます。
実際の取引日は、2月1日で、3月1日に為替予約をしました。
仕入代金(100ドル)の支払は、3ヵ月後の予定です。
まず、ヘッジ対象の為替の評価です。
<取引日> 仕入 11,500円 / 買掛金 11,500円 (100ドル×2/1の直物レート)
<予約日> 買掛金 500円 / 為替差益 500円 (2/1の直物 - 3/1の直物 (115 - 110) × 100ドル)👈 直々差額
<決算日> 仕訳なし
<決済日> 買掛金 10,500円 / 現金 10,500円
次に、ヘッジ手段の為替の評価です。
<取引日> 仕訳なし
<予約日> 買掛金 500円 / 前受収益※1 500円 (3/1の直物 - 3/1の先物 (110 - 105) × 100ドル) 👈 直先差額
<決算日> 前受収益※2 166円 / 為替差益 166円 (500円×(1/3)予約日~決算日/予約日~決済日)
<決済日> 前受収益 344円 / 為替差益 344円 (※1-※2)
独立処理との大きな違いは、
- 為替予約日に、直物レートの為替評価をおこなうこと
- 為替予約日に、直物と先物レートの為替損益を、各決算期に配分すること
の2点ですね。
メモ
実務で振当処理を使用するには、
- 会計方針に明示すること
- ヘッジ要件を満たすこと
の2要件が必要です。
まとめ
以上、為替予約に関する会計処理を解説しました。
為替予約を理解するのに大切なのは、
- 為替予約の考え方
- ヘッジ対象、ヘッジ手段
- 直物レート、先物レート
といった、為替予約特有の用語に慣れることかと。
会計処理については、
- 独立処理は、普通に為替の評価を行う
- 振当処理は、直先レートの差額を期間配分する
と整理することがおすすめです。
みなさんの簿記の勉強や実務の参考になれば幸いです。