こんな方におすすめ
- 一時差異と永久差異って何が違うの?
- 税効果会計が苦手で悩んでいる
- 一時差異を分かりやすく知りたい!
こんな悩みを解決できる記事を用意しました!
この記事では、簿記の勉強や実務で役立つ、「税効果会計の一時差異」について、
実際に、上場企業の決算で税効果を経験した筆者が解説します。
会計用語はかなり分かりづらいので、まずは大枠の考え方を理解しましょう。。
上場企業・経理歴3年、税理士試験に合格した現役経理マンが紹介します。
記事前半では「そもそも一時差異とは」について、
後半では「一時差異と永久差異の違い」について解説するので、
ぜひ参考にしてくださいね!
そもそも一時差異とは
そもそも一時差異って何?
と思わる方に、一時差異の定義を確認しておきましょう。
結論、一時差異の特徴は2つあります。
- 会計と税務の費用・収益の計上時期の『ズレ』
- この『ズレ』はいつか解消される
です。
メモ
ちなみに、税務上は費用・収益のことを『損金・益金』といいます。
会計『費用・収益』 ≒ 税務『損金・益金』 と覚えておきましょう。
ここでは、損金・益金は、税務上の費用・収益という言葉で解説します。
でも、なんで会計と税務で計上する時期に『ズレ』がおきるの?
って思いますよね。
結論、
- 会計は、できるだけ早めに、費用を計上したい。
- 税務は、費用を計上するのに厳格なルールがある。
それぞれの認識時期の考え方によって、『ズレが』生じます。
それぞれの考え方をもう少し詳しく紹介しますね。
会計上の考え方
結論、会計は保守的なので、できるだけ費用を計上します。
なぜなら、会計のルールは、企業の決算数値を投資家などにきちんと説明するためにありますよね。
つまり、本当は利益が低いのに、利益が高い状態で決算を発表してしまうと、
- 実力以上に株価が上がってしまう
- 実力以上に銀行から融資を受けることができる
など、投資家や取引先に間違った情報を与えてしまいますよね。
なので、必要に応じて、引当金の設定や減損損失の計上など、
本当に、費用に計上するものがないか厳しくチェックします。
ポイント
会計上は、『利益が出すぎてないか?』の視点でチェックします。
税務上の考え方
税務上は、費用を認めるために、きちんとしたルールがあります。
なぜなら、税務上は、無制限に費用を認めてしまうと、税金を徴収することができません。
例えば、賞与引当金ってありますよね。
そもそも賞与引当金は、あくまで見積りの金額なので、期末時点では、税務上は費用として認めてくれません。
支払ったときに、初めて税務上の費用として認めてくれます。
つまり、税務上の費用として認めてもらうには、厳格なルールがあるのです。
以下は、税務上の費用として認めるときの要件です。
- (1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
- (2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
- (3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。
修繕費を例にとると、建物等の修繕を発注し、業者によって修繕が完了し、かつ金額の見積りが客観的にでき得る状況にあれば、上記の3つの要件を満たし未払金等として計上できることになります。引用先 : 債務確定の判定(国税庁)
ポイント
税務上は、『支払う税金が少なくないか?』の視点でチェックします。
解消とはなにか?
一時差異の1つ目も特徴について、会計と税務の認識時期のズレについて解説しました。
ところで、2つ目の解消ってなに?
って、当然思いますよね。
解消とは、会計と税務の認識の『ズレ』がなくなることです。
例えば、賞与引当金を☓1年3月期に100万円を計上したとすると、
会計上は、100万円の費用計上が認められますが、税務上は費用として認めてくれません。
なぜなら、税務上は賞与を支払ったときに、費用として認めてくれるからです。
つまり、☓1年3月期に一時差異、100万円が発生しますね。
☓2年3月期に、賞与の支払いが完了すると、税務上も費用として計上されるので、
会計上の費用と税務上の費用がどちらも計上されました。
この会計上と税務上のどちらも費用が計上された段階が『解消』になります。
つまり、☓2年3月期に一時差異が解消されたわけです。
したがって、
- 一時差異が発生
- 会計上、税務上のそれぞれの費用として認められた
この2つによって、『解消』がおこります。
【将来減産一時差異】と【将来加算一時差異】とは?
一時差異が生じる理由について、上記で解説しました。
一時差異とは、
- 会計と税務の費用・収益の計上時期の『ズレ』で、
- いずれ解消される
ものでしたね。
その一時差異の中でも『将来減産一時差異』と『将来加算一時差異』があります。
この2つは何かというと
- 『将来減算一時差異』とは、今後支払う税金を少なくする効果がある一時差異
- 『将来加算一時差異』とは、今後支払う税金が多くなる効果がある一時差異
になります。
『将来減算一時差異』とは?
上記で、将来減算一時差異の定義を確認しましたが、
そもそも、今後支払う税金を少なくする一時差異ってなに?
って思いますよね。
例えば、
賞与引当金は、会計上は費用になりますが、税務上は損金にならないので、一時差異に該当します。
なぜなら、税務上の賞与引当金の取り扱いは、支払ったときに費用になるからです。
つまり、翌期の費用に計上するということは、翌期の課税所得が減りますよね。
課税所得が減れば、支払う税金も減ります。
したがって、支払う税金を少なくする効果があるということになります。
メモ
支払う税金 = 課税所得 × 法人税率
課税所得 = 当期純利益 △ 税務上の費用(税金を少なくする効果) + 税務上の収益
他の将来一時減算差異の例としては、
- 減価償却超過額
- 貸倒引当金繰入超過額
などがありますよ。
『将来加算一時差異』とは?
次に、将来加算一時差異差異を説明しますね。
減算一時差異と反対の考え方でいいってこと?
その通りです。考え方は、将来減算一時差異の反対です。
例えば、圧縮記帳を行ったときです。
圧縮記帳には、課税を繰り延べるする効果があります。
つまり、税金の支払いを先延ばしにすることができます。
ということは、翌期以降の課税所得が増えて、支払う税金が多くなりますよね。
したがって、今後支払う税金が多くなる効果がある一時差異に該当します。
ポイント
将来減算一時差異は、将来税金を少なくする効果がある = 将来得する
将来加算一時差異は、将来税金を多く支払う効果がある = 将来損する
メモ
ちなみに、日本の一般的な企業では、
『将来減算一時差異』は、多く存在しますが、
『将来加算一時差異』は、あまりありません。
一時差異と永久差異の違いとは?
最後に、一時差異と永久差異の違いをご紹介します。
結論は、
- 一時差異は、『差異は、いずれ解消される』
- 永久差異は、『差異は、永久解消されない』
です。
先ほど解説した一時差異は、あくまで一時的な差異で、いつかその差異は解消されます。
しかし、永久差異については、ずっとズレ残り続けます。
なぜなら、会計と税務の『そもそもの考え方の違い』によるものになります。
例えば、『交際費の損金不算入』です。
- 経営者が意図的に所得を減らし、納税額を少なくする
- 課税の公平性を守る
といった、税務独自の視点でルールを設けているため、永久に差異は解消されません。
その他にも、
- 寄付金の損金不算入額
- 役員等の損金不算入額
- 罰金等の損金不算入額
などがありますよ。
ポイント
永久差異は、ずっと解消されないため、将来の税金の支払いに影響がありません。
したがって、税効果会計の対象になりません。
まとめ
以上、税効果会計の一時差異について、解説しました。
大切なことを繰り返しますと、
一時差異とは、
- 会計と税務の費用・収益の計上時期の『ズレ』
- この『ズレ』はいつか解消される
一時差異と永久差異の違いは、
- 一時差異は、会計と税務の『費用・収益の認識時期の一時的なズレ』
- 永久差異は、会計と税務のそもそもの考え方の違いで、永久的なズレ
になります。
みなさんのご参考になれば幸いです。