こんな方におすすめ
- 繰延税金資産ってなに?
- 税効果会計が苦手!
- 回収可能性がよく分からない!
こんな悩みを解決できる記事を用意しました!
この記事では、簿記の勉強や実務で役立つ、「税効果会計の繰延税金資産」について、
実際に、上場企業の決算で税効果会計を担当した筆者が解説します。
上場企業・経理歴3年、税理士試験に合格した現役経理マンが紹介します。
記事前半では「そもそも繰延税金資産とは?」について、
後半では「回収可能性」について解説するので、
ぜひ参考にしてくださいね!
税効果会計の繰延税金資産とは?
そもそも繰延税金資産ってなに?
と思いますよね。
結論、繰延税金資産とは、『税金の先払い』です。
なぜなら、繰延税金資産には今後の税金の支払いを少なくする効果があるからです。
今後の税金の支払いを少なくする効果がある?
ピンとこない方もいると思います。
『今後の税金の支払いを少なくする効果がある』ということを理解するには、
会計上と税務上のルールに違いがあることを理解しましょう。
なぜ違いがあるの?
違いが生まれる原因は、会計と税務で考え方に違いがあるからです。
なぜなら、税務は、費用計上を認めるルールが厳格だからです。
会計と税務の違いに関しては、以下の記事で詳しく記載していますので、ご参考にしてみて下さい。
-
会計と税務の考え方の違いとは?
では、なぜ違いがあると、『今後の税金の支払いを少なくする効果がある』のか?
について、賞与引当金で確認します。
賞与引当金は、
- 会計上は、費用計上したときに、費用として認識可
- 税務上は、支払ったときに、費用として認識可
つまり、支払うまでに期をまたぐと、会計上と税務上で違いがうまれるわけです。
例えば、令和3年3期に賞与引当金50円を計上して、翌期の6月に賞与の支払いを行い、
売上は100円とします。
- 会計上は、令和3年3月期に費用計上
- 税務上は、令和4年3月期に費用計上
違いがうまれましたね。
それでは、『令和3年3月期』と『令和4年3月期』の税金を確認してみます。
『令和3年3月期』の税金。
『令和4年3月期』の税金。
税務上で、50円がプラスされたり、マイナスされたりするのが分かるかと思います
結論からいうと、令和3年3月期の +50円が『今後の税金の支払いを少なくする効果がある』ものになります。
なぜなら、この金額が、令和4年3月期でマイナスされていますよね。
令和3年3月期に50円がプラスされたため、令和4年3月期でマイナスされるわけですね。
令和3年3月期にプラスされた分の税金を先に払っているので、令和4年3月期の税金も15円安くなってます。
つまり、『令和3年に先払いした』と考えます。
繰り返しますと、繰延税金資産とは税金の先払いのこと。
なぜなら、『今後の税金の支払いを少なくする効果がある』から。
その効果は、会計上と税務上の考え方の違いによってうまれます。
上記の例でいうと、15円が繰延税金資産になります。
仕訳は、以下のとおりです。
(借方)繰延税金資産 15円 / (貸方)法人税等調整額 15円
繰延税金資産の取崩とは?
繰延税金資産については、なんとなく分かったけど、
取崩しってなんなの?
と疑問に思う方もいるかと。
結論、繰延税金資産の取崩とは、繰延税金資産を減少させることです。
仕訳でいうと、以下のとおり。計上したときの逆仕訳ですね。
(借方) 法人税等調整額 / (貸方) 繰延税金資産
どうして取崩しが必要なの?
取崩しが起こる理由は、翌期以降に赤字になってしまうときです。
なぜなら、赤字だとそもそも支払う税金がないので、『税金を少なくする効果』がありませんよね。
したがって、『税金を少なくする効果』が認められず、繰延税金資産をマイナスする必要があるわけです。
取り崩すかどうかの基準は、『回収可能性』っていう基準があるのでこれから解説しますね。
繰延税金資産の回収可能性の考え方とは?
繰延税金資産の回収可能性って、なんなの?
と思いますよね。
結論、繰延税金資産の回収可能性とは、
- そもそも計上できるのか?
- 計上できるなら『いくら』計上できるのか?
の基準です。
自分の会社が、基準を満たしているか確認して、繰延税金資産の計上を決めるわけです。
具体的に、回収可能性は5つのパターンに分類されます。
わかりやすくするために、ざっくりと分類しますね。
つまり、会社の業績によって、計上できる金額が決まります。
ちなみに、業績は、今期だけではなくて、過去と未来の業績をみて判断します。
この作業をスケジューリングっていいます。
たとえば、去年まで『分類3』だったたけど、スケジューリングした結果、『分類5』になってしまった場合は、
繰延税金資産を取り崩す必要があります。
つまり、分類がよくなくなると、取り崩しは発生します。
回収可能性の詳細の要件は、以下のサイトを参考にするのがおススメです。
回収可能性の判断方法
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金の負担を減らすことができるかどうかで判断します。具体的には、将来に渡って十分な課税所得が出るかどうかを検討します。将来に発生する課税所得に基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断するにあたっては、①過去3年及び当期(以下、「計4年」)における課税所得の発生状況、②計4年における税務上の欠損金の存在、及び③近い将来経営環境に著しい変化が見込まれるかによって企業を5つに分類し、その分類によって繰延税金資産の回収可能性を判断します。
まとめ
以上、繰延税金資産について解説しました。
大切なところをまとめますと、
繰延税金資産とは、『税金の先払い』であること。
なぜ『税金の先払い』であるかというと、今後の税金を少なくする効果があるからで、
税金の効果を少なくする効果がある原因は、会計上と税務上の考え方に違いがあるからでした。
取り崩しは、繰延税金資産をマイナスすること。
なぜ、マイナスするかというと、企業が赤字になると、そもそも支払う税金がないので、
税金を少なくする効果もなくなるからです。
そして、繰延税金資産を計上できるかどうか・いくら計上できるのかは、
回収可能性の基準を確認して、判断します。
みなさんの参考になれば幸いです。