こんな方におすすめ
- 私のフリーランス所得は事業所得?雑所得?
- フリーランスの事業所得と雑所得はどう違うの?
- フリーランスの事業所得のメリットは?
こんな悩みを解決できる記事を用意しました!
この記事で紹介する「事業所得と雑所得の分類方法」をご参考にすれば、
フリーランスの人や、これからフリーランスを目指す人にとって役に立ちますよ。
税金のことは確定申告間際に税理士に丸投げでいいやと思っていませんか?
もちろん、税務の専門家に任せるのは賢い選択。
とはいえ、必要最低限の税務知識を知っておくことで、無駄なお金を支払わずに済むことも。
プライム企業の経理4年目、税理士試験に合格した現役経理マンが紹介します。
記事前半では「そもそもフリーランスの事業所得とはなにか?」について、
後半では「事業所得と雑所得の分類方法」について解説するので、ぜひ参考にしてくださいね!
そもそもフリーランスの事業所得とはなにか?
そもそも事業所得ってなに?
を考える前に、『所得」は何か?を確認しておきましょう。
結論からいうと、所得とは「もうけ」のこと。
言い換えると、収入-経費=所得になるということです。
例えば、
- フリーランスのカメラマンが獲得した報酬が500万円
- 交通費や機材の購入代金が 100万円
だとしたら、500万円(収入)-100万円(経費)=400万円(所得)になります。
所得の定義を確認したところで、所得の種類を確認しましょう。
なぜなら、所得には10種類あるからです。
具体的には、以下の分類になりますよ。
要するに、事業所得とは所得のなかの1つに当てはまるわけです。
では、なぜ10種類もの所得が分類されているかというと、
それぞれの所得の特性によって、税金を支払う力が変わってくるからです。
例えば、
- 貯金の利息や、家賃収入だったら、資産運用で獲得した所得
- サラリーマンの給与やフリーランスの報酬であれば、労働で獲得した所得
など。
『税金をいくら払うか?』の計算方法もそれぞれの所得によって変わってくるわけですね。
前置きが長くなりましたが、ここで事業所得の定義を確認しましょう。
国税庁のHPでは以下のように定義されています。
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。
ただし、 不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得になります。
もちろんフリーランスの種類によって異なりますが、
ほとんどのかたであれば、上記の太字のサービス業に当てはまるかと。
他にも事業所得の代表例は
- プロ野球選手、プロゴルフファーの報酬
- 芸能人の報酬
などが挙げられます。
フリーランスの事業所得と雑所得の分類方法
事業所得の概要を抑えたところで、
ここからは『事業所得』と『雑所得』の違いを解説します。
よく事業所得との違いの引き合いにだされるのは「雑所得」。
みなさんも自分の所得が「事業所得」か「雑所得」かで調べた方もいるかと。
では、なぜ?この2つの所得を分けなければいけないのか?
結論からいうと、所得税の計算方法が違うからです。
所得の特性によって、所得税の計算方法が変わってくることは上記で解説しましたよね。
なので、2つの所得がどちらの所得かを判断する必要があるわけですね。
もちろん、ケースによっては事業所得と雑所得を区別するのは難しい場合もあります。
とはいえ、
『事業所得と考えていたけど、雑所得とされてしまった』
場合は、後述する事業所得とのメリットを受けられません。
ゆえに、想定外の所得税を支払う可能性もあります。
したがって、これらの違いは慎重に見極める必要があります。
では、どうやって事業所得と雑所得を分類するの?
税務大学校の所得税の教科書には以下のように記載してあります。
引用先 : 所得税(基礎編)令和4年度版 : 税務大学校
法律用語で読みづらいですが、ポイントは以下の点になりますよ。
要するに、総合的に『これらの要素をどれだけ満たせるか?』を判断する必要があるわけですね。
これだけだとイメージが付きづらいので、
ここからは、実際の判例をもとに解説しますね。
金銭貸付けに係る所得が事業所得に該当するとの請求人の主張を認めず、当該所得は雑所得に当たると認定した事例
▼ 平成12年9月19日裁決
金銭貸付けに係る所得について、請求人は、貸金業者として登録しており、営業チラシの配布により広く一般の顧客を求めるとともに、人的・物的設備を備えて事業として金銭を貸し付けているので、事業所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件における特定の法人に対する金銭貸付行為は、[1]請求人と当該法人とが特殊の関係にあること、[2]担保を徴していない若しくは担保が形式的で実質を伴わないこと、[3]貸付金利が低すぎること、[4]請求人は、当該法人が市中から借り入れる際に、保証料を得ることなく連帯保証人となっていること、[5]当該法人は自力で市中銀行から融資を受けられる状況になかったこと等を勘案すると、社会通念に照らして営利を目的とした事業として行われているとは認められない。
この判例では、
納税者が
貸付事業者に登録している
設備を配置している
などを根拠に『事業所得』と主張しましたが、認められずに『雑所得』になりました。
認められなかった理由は、
『反復継続』、『営利性』が認められなかったからです。
このように、事業全体の内容を総合して
『事業所得』か『雑所得』かを判断する必要があることが分かりますよね。
ちなみに、事業所得ではなく、雑所得と判定される流れは以下のとおり。
1.事業所得として認められない。
2.①から⑨の所得にも該当しないから、雑所得に該当する。
つまり、上記の①~⑨のどれにも当てはまらなかったら、雑所得になるといったロジックです。
税務大学校の解説にも雑所得の定義は、以下にように記載があります。
引用先 : 所得税(基礎編)令和4年度版 : 税務大学校
フリーランスの事業所得のメリット3選
上記では事業所得と雑所得の分類方法を確認しました。
2つの所得を分けた理由は、2つの所得の計算方法が違うからでしたね。
ではどっちが、所得税の計算で有利になるの?
結論からいうと、事業所得です。
理由は、以下の3つのメリットがあるからです。
- 損益通算
- 損失の繰越控除
- 青色申告特別控除
それでは、1つずつ解説しますね。
【フリーランスの事業所得】①損益通算のメリット
まずは、損益通算。
そもそも損益通算ってなにか?
損益通算とは、、、
損益通算とは、各種所得金額の計算上生じた損失のうち一定のもの(損益通算の対象となる所得の範囲(1)から(4)記載の所得)についてのみ、一定の順序にしたがって、総所得金額、退職所得金額または山林所得金額等を計算する際に他の各種所得の金額から控除することです。
引用先:損益通算(国税庁)
要するに、黒字の所得と赤字の所得があればそれを相殺できるわけです。
例えば、
- 不動産所得で1億円の黒字
- 事業所得で5,000万円の赤字
であれば、1億円-5,000万円 で5,000万円が所得になります。
一方、損益通算ができないと
不動産所得の1億円が課税対象になり、支払う税金も多くなるわけです。
ではなぜ?事業所得だと損益通算が有利であるかというと、
損益通算の対象となる所得は限られているからです。
具体的には、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つ。
先程の例の
- 不動産所得で1億円の黒字
- 事業所得で5,000万円の赤字
であれば、1億円- 5,000万円 = 5,000万円。
つまり、損益通算が可能。
逆に、
- 不動産所得で1億円の黒字
- 雑所得で5,000万円の赤字
であっても課税対象は1億円というわけです。
理由は、雑所得が損益通算の対象ではないからです。
【フリーランスの事業所得】②損失の繰越控除のメリット
次に損失の繰越控除について確認します。
結論からいうと、
損失の繰越控除とは損失が発生すると、その損失を3年間繰り越せるということです。
それでは、具体例を使って解説しますね。
例えば
- 令和4年に損失(赤字)が1億発生
- 令和5年に所得(黒字)が1億円
であれば、令和5年の所得を1億円-1億円=0円にすることができるわけです。
逆に、損失の繰越控除ができないと、
令和5年の所得は1億円のままになってしまいます。
では、なぜ?事業所得が損失の繰越控除のメリットがあるかというと、
損失の繰越控除の対象となるのは、「損益通算で発生した損失」に限られるからです。
上記の損益通算で確認したとおり、対象となる所得は以下の4つでした。
言い換えれば、雑所得だと損失の繰越控除の恩恵を受けることが出来なわいわけですね。
【フリーランスの事業所得】③青色申告特別控除のメリット
青色申告特別控除ってなに?
結論からいうと、
青色申告特別控除を適用すれば最大65万円の特別控除を受けることができます。
端的にいうと、節税効果を生み出し、支払う税金が少なくなるわけです。
そもそもみなさんが提出する確定申告書は、
- 青色申告
- 白色申告
に分けることができます。
イメージとしては、以下の感覚です。
- 青色申告 = 提出する書類やいろいろな要件を満たす必要がある
- 白色申告 = 申告の手続きが簡単
つまり、青色申告と認めてもらうには『要件』があるわけです。
この要件の1つが、事業所得を営んでいることというわけです。
したがって、
事業所得 = 青色申告の1つの要件を満たせる。
⇓
他の要件も満たせば、青色申告と認められ、青色申告特別控除を適用できる。
というロジックになるわけですね。
まとめ
以上、フリーランスの事業所得について解説しました。
大切なことは、自分のもうけである所得が10種類の所得のどれに該当するか?を確認すること。
そしたら、その所得にあった計算方法で所得税を計算する必要があります。
もし、自分の所得が何に該当するかわからない場合は、税理士に相談するのがおすすめです。
みなさんのフリーランスライフの参考になれば幸いです。